DICOMO2023シンポジウム参加報告
伊勢田 氷琴 (奈良先端科学技術大学院大学)
2023/7/5~2023/7/7に富山国際会議場で開催されたマルチメディア、協調、分散とモバイル(DICOMO2023シンポジウム)に参加しました。DICOMOは、ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会やマルチメディア通信と分散処理(DPS)研究会を始めとする10の研究会と1つの研究グループからなる大規模なシンポジウムです。今年度のDICOMOは4年ぶりに対面形式で実施され、そこかしこで活発な議論が展開されていました。私自身、行動認識について研究していますが、それ以外にも非常に多くの分野で発表があり、大変刺激を受けました。ここでは、簡単にではありますが参加時の様子をと興味を持った発表をいくつかレポートさせて頂きます。
1日目は奈良先端科学技術大学院大学の松田先生の発表「珠算学習支援のための盤面認識に基づくリアルタイム情報提示手法」を聞きに行きました。書画カメラとコンピュータからなる非常にシンプルな構成のシステムで、算盤の盤面という複雑な状況を高い精度で認識できており、非常に高い技術力が高いと感じました。また、リアルタイムなフィードバックを学習者に行っており、高い学習効果も期待できます。
また、神戸大学の引原さんの発表「和音の構成音のずれから生じるうなりの強調提示による合唱練習支援システムの設計と実装」も大変印象に残りました。こちらの研究は、合唱時に、個々のピッチの若干のずれから発生する「うなり」に注目し、うなりを聞き取る能力を向上させることで、合唱スキルを向上させるという目的の研究でした。実際に、自身が出した声に対するうなりを発生させるデモも行っており、確かに練習として効果がありそうだと感じました。今後の研究のさらなる発展を期待したいです。
さて、今年度のDICOMOは感染症対策もあり、温泉旅館等ではなく、会議場で開催されたため、昼食・夕食には弁当が配布されました。皆で集まっての会食が無いのは少し残念ではありましたが、弁当では鯛の昆布締めや白エビなどが入っており、富山にいることを感じることができました(写真参照)。
2日目は自身の発表である「WiFiバックスキャッタータグを用いた非接触行動認識システムの提案」を行いました。こちらの研究は、バックスキャッター通信と呼ばれる超低消費電力で通信可能な技術を、行動認識に応用したものです。多くの方に発表を見てもらうことができ、多くの意見を頂きました。対面での質問対応は少し緊張しましたが、研究の発展につながるフィードバックも頂くことができ、非常に有意義な時間でした。
夜には、DICOMO恒例のナイトセッションが開催されました。はんこの識別が人間の目で本当にできるのか検証する発表、算盤の盤面を楽器として使用しループ演奏を行う発表、ChatGPTと人間はどちらが面白い漫才ネタを作ることができるのか検証する発表や、猫になりきって癒されるのか検証する発表など、どれもユーモアと創意工夫に富んでおり、非常に面白く発表を聞くことができました。
3日目は午前中が一般口頭発表、午後が特別招待公演と表彰式・閉会式でした。口頭発表は、セッション8Bを聴講しました。特に印象に残ったものは、神戸大学の辻さんの発表「ストローへの振動付与・音再生・流量変化が主観的な飲料摂取量に与える影響の評価」です。ストローで物を飲むときに振動や音を与えると、飲み物を飲む量を減らせるのではないかと言う問題意識のもと行われた研究でした。生活習慣の変化により、糖尿病患者は日本でも増え続けているため、この技術の今後のさらなる発展と社会実装に期待したいです。
特別招待公演では、SAI-Labの我妻さんが「生成AIの現状と展望: AIと共生する未来への道程」と題して、生成系AIの現状や上手な使い方、社会でどう受け入れるべきかといったトピックに対して、豊富な具体例と共に自身の考えを述べられていました。私自身、開発や先行研究の調査でLLMを使用していますが、プロンプトの与え方や、考え方などは非常に参考になりました。また、公演終了後には様々な質問が寄せられていましたが、特に印象に残ったのが「AIの定義」について聞かれた際に「AIは人間を孤独から救う存在」と答えていたことです。同じ知性を持った存在として、AIを敵視するのではなく共生することが重要なのだそうです。 3日目は午前中が一般口頭発表、午後が特別招待公演と表彰式・閉会式でした。口頭発表は、セッション8Bを聴講しました。特に印象に残ったものは、神戸大学の辻さんの発表「ストローへの振動付与・音再生・流量変化が主観的な飲料摂取量に与える影響の評価」です。ストローで物を飲むときに振動や音を与えると、飲み物を飲む量を減らせるのではないかと言う問題意識のもと行われた研究でした。生活習慣の変化により、糖尿病患者は日本でも増え続けているため、この技術の今後のさらなる発展と社会実装に期待したいです。
特別招待公演では、SAI-Labの我妻さんが「生成AIの現状と展望: AIと共生する未来への道程」と題して、生成系AIの現状や上手な使い方、社会でどう受け入れるべきかといったトピックに対して、豊富な具体例と共に自身の考えを述べられていました。私自身、開発や先行研究の調査でLLMを使用していますが、プロンプトの与え方や、考え方などは非常に参考になりました。また、公演終了後には様々な質問が寄せられていましたが、特に印象に残ったのが「AIの定義」について聞かれた際に「AIは人間を孤独から救う存在」と答えていたことです。同じ知性を持った存在として、AIを敵視するのではなく共生することが重要なのだそうです。
最後になりますが、本シンポジウムを企画・運営していただいた先生ならびに企業の皆様に感謝申し上げます。これからも、分野に囚われない斬新で新しい研究が発表され、対面で活発な議論が行われることを願っております。