UbiComp/ISWC 2023参加報告
岩切 俊佑 (立命館大学)
2023年10月8日から10月12日の間、私はメキシコのカンクンで開催されたUbiComp/ISWC(ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing / ACM International Symposium on Wearable Computers)に参加しました.会場のいたるところで活気ある議論が広がりを見せ,私の研究分野である「認証」に関するものだけでなく,多岐にわたる分野でのプレゼンテーションが展開され,非常に刺激的な時間を過ごすことができました.ここでは,会場の様子と特に興味深かった発表をいくつかピックアップしてレポートさせていただきます.
1日目に興味をもったのは「SmokeMon: Unobtrusive Extraction of Smoking Topography Using Wearable Energy-Efficient Thermal」という論文で,喫煙イベントを控えめかつ受動的に検出するための,着用者とタバコの周囲の空間的,時間的,熱的情報を一日中キャプチャできる胸部装着型熱感知ウェアラブルシステムSmokeMonが紹介されていました.SmokeMonをオープンプラットフォームとして提供することで,タイムリーな禁煙介入を促進する可能性が示唆されていました.
また,慶應義塾大学の北村さんの発表「TouchLog: Finger Micro Gesture Recognition Using Photo Reflective Sensors」も大変印象に残りました.この研究では,身体的負担が少なく,秘匿性が高く,触覚フィードバックが得られるという利点があり,実行しやすく,社会的に受け入れられるインタラクションを可能にする指先入力手法として指先を利用して親指で人差し指に書いた指のマイクロジェスチャーを識別する爪型デバイスTouchLogが提案されていました.斬新かつ画期的な発表内容で,とても興味深く聞かせていただきました.今後の研究のさらなる発展を陰ながら楽しみにさせていただいております.
2日目は自分自身の研究である「User Authentication Method for Wearable Ring Devices using Active Acoustic Sensing」の発表を行いました.この研究は,アクティブ音響センシングを指に用いることで,指輪型デバイスによる個人認証を行うものです.大変緊張しましたが,多くの方々に発表を聞いていただくことができ,大変有意義な時間を過ごすことができました.発表後のパネルディスカッションにおいても,「未来の認証システムについて」や「被験者数の妥当性」などのディスカッションが行われていて,とても興味深く参加させていただきました.夜にはGala Dinnerが開催され,メキシコの優雅なビーチを背景に,さまざまな食べ物や飲み物が用意されており,その規模に圧倒されました.
3日目にとても興味をもったのは,「Can You Ear Me?: A Comparison of Different Private and Public Notification Channels for the Earlobe」という論文で,耳たぶに通知を行う手法が紹介されていました.適切に小型化されれば、耳たぶがウェアラブル技術に適した場所であることが示されていました.とても面白い情報提示方法だと感じ,興味深く聞かせていただきました.
最後になりますが,国際発表奨励賞において渡航補助をしていただき,ユビキタスコンピューティングシステム研究会の皆様には感謝を申し上げます.これからも研究会から革新的な研究が発表され,世界に羽ばたき活発で有意義な議論が行われることを心から願っております.