第78回UBI研究会参加報告
永田 吉輝 (名古屋大学)
2023年5月24日-26日に慶応大学三田キャンパス(24日)と伊豆大島(25・26日)にて開催された、第78回UBI研究発表会に参加しました。この研究会はハイブリット形式で実施され、合計16件のご発表と、2件のトップ会議突破講座がありました。本研究会の様子を、簡単にではありますがご報告いたします。
1日目は慶応大学三田キャンパスの東館 G-Lab で行われました。G-Lab は、2台の巨大スクリーンや2階席がある会議室で、とても贅沢な会場でした。私はこの会場で発表だったのですが、この贅沢な会場で久しぶりのオフライン発表だったため、少し緊張してしまいましたが、前川先生や西尾先生から貴重なコメントを頂き、とても参考になりました。他の方のご発表も数点紹介します。東京農工大学の村儀さんのご発表では、熟練者不足が問題となる工業製品の製造現場において、作業過程における「迷い」とその強度を検出しようとする試みがなされていました。工場における作業では、モノの配置や作業難易度の差により、様々な時間的・人的コストが無駄になっていると考えられるため、このような取り組みで少しでも無駄を減らせると良いと思います。NTTの神田さんのご発表では、ストレス状態のモニタリングを手軽に実現するため、対光反射をPCやスマホで観測するための研究をされており、センシング自体の負担軽減を目指す面白い研究だと感じました。今後この技術が実用化され、知らず知らずのうちに体調の変化を知らせてくれるようなサービスの実現を期待したいと思います。また、2022年度の受賞者に対する表彰式も行われました。(私も、昨年度修士で卒業した同期の学生奨励賞を、共著者としていただきました。) 1日目の最後には、UBI研究会でご発表後にトップ会議に採択され、国際発表奨励賞を受賞された野村さん (東京工業大学) とThilina さん (大阪大学) の参加報告も行われました。
2日目の研究会は、伊豆大島の東京都大島町開発総合センター大会議室で行われました。2日目も1日目と同様に研究報告が行われました。東北大学の小林さんのご発表では、温度ゆらぎを利用したエネルギーハーベスタを開発し、水道管等のインフラ設備の異常検知を、電池交換なしで実現する手法を研究されていました。日本では現在少子高齢化が進んでおり、建設業を含む様々な業種で働き手不足が深刻化すると予想されるため、このような技術の発展が期待されると思います。また、筑波大学の坂田さんのご発表では、VRにおける利用を前提とした頭部で行うタッチインタフェースの実現方法について研究されており、VR空間においてより直感的な操作が実現すると期待されます。
3日目の研究室も2日目と同様に開発総合センター大会議室で行われ、前川先生と村尾先生によるUbicomp(IMWUT)突破講座とISWC突破講座が行われました。どちらも国際的なトップ会議に対する講座でしたが、先生方にご紹介いただいたトップ会議に採択されるための戦略が異なっていました。大学入試において基礎学力と大学別の対策が必要なように、トップ会議への採択においても、大学入試において基礎学力と研究内容が重要なのは共通ですが、その上で自分の研究をどう見せるかが重要なのだと感じました。また、3日目の午後は伊豆大島内の巡検が行われ、地層大切断面や波浮港、裏砂漠、三原山山頂口を見学し、伊豆大島の地質や歴史について学びました。バスの運転手さんによる伊豆大島にまつわるお話も、島ならではの内容が多く、とても興味深かったです。
最後になりますが、研究発表のみならず様々な機会を提供してくださった本研究会、および準備してくださった先生方に感謝を申し上げます。次回のUBI研究会は、9月頃に長崎大学で、MBL, CDS, ASD研究会と合同で開催されるとのアナウンスもありました。また、来年単独で行われるUBI研究会は、屋久島での開催を計画しているとのアナウンスもありました。今後も斬新なアイデアの提案や、活発な議論を楽しみにしております。